紙造形作家RYOSUKE氏
ドキュメンタリー映像制作の裏側
紙造形作家RYOSUKE氏
ドキュメンタリー映像制作の裏側
こんにちは、映像クリエイターの井村 旭宏です。今回は、私が独立前に制作した「紙造形作家 RYOSUKE氏」のドキュメンタリー映像について、制作の背景やこだわり、公開後の反響などをまとめてみたいと思います。
この映像は、自分にとって大きな気づきやチャンスを与えてくれた、とても思い入れのある作品です。この制作背景を通して、私の映像に対する姿勢や考え方、表現の特徴などをぜひ感じていただければと思います。
この映像はクライアントワークではなく、自主制作として取り組みました。自身の強みとして考えている「ストーリー性のある構成力」や「情緒感のある映像表現」を形にしたいと思い、ポートフォリオ作品として挑みました。
題材としては、何となくアーティストの方のドキュメンタリー映像を作りたいなと思っており、知人を通じて紙造形作家のRYOSUKEさんをご紹介いただきました。「1枚の紙」という身近な素材を超絶的な技巧で独自の造形作品へと昇華するRYOSUKEさんの作品に触れ、私が目指している映像表現ととても相性が良さそうだと直感しました。
簡単な顔合わせをした後に、まずはヒアリング兼インタビュー撮影を実施しました。事前に質問事項はお渡ししていましたが、原稿はあえて用意せず「会話」ベースで答えてもらう形でお願いしました。原稿がある方が撮影はスムーズに進むと思いますが、どうしても読んでいる感じが出てしまいます。質問に対して素直に出てきた言葉を語っていただく方が、言い間違いや言い淀みがあったとしても、話者の人柄や心情がリアルに伝わると考えているからです。
その後、インタビュー内容を精査し、タイムライン上に簡単にインタビュー素材を配置し、大まかなストーリーを組み立てました。その内容を踏まえて必要なイメージカットを検討し、改めてシーン撮影を行いました。室内での制作風景から屋外での撮影までを約半日で予定で組んでいたのですが、冬場でしたので陽が落ちるのが早く、時間的に割と焦りました(苦笑)。こうしたスケジューリングは以降の仕事にとても生かされました。
カメラはSONY FX3を使用しています。レンズは標準ズームを中心に運用しつつ、場面に応じて単焦点や望遠マクロを使用し、印象的なボケ感や近接での迫力のある描写にこだわりました。
編集では、強弱や間の取り方、テンポ感も含めて、ストーリーのメリハリを意識し、視聴者が自然に惹き込まれるような映像を心がけました。カラーグレーディングでは、全体を通してシネマライクなトーンでRYOSUKEさんの作家性を際立たせることを意識しています。
完成した映像は、RYOSUKEさんにとても喜んでいただけました。ご本人のSNSの他、展覧会などでも使用していただいていると伺っています。
また、さまざまなご縁を生んでくれたのも、この映像の大きな成果でした。たとえば、映像クリエイターの石田 裕一さんのYouTubeチャンネルで、この作品をレビューしていただく機会をいただきました。(その動画はこちら)
実はこの作品を作ろうと思ったきっかけのひとつが、石田さんのドキュメンタリー講座を受講したことでした。講座を通して学んだ映像の考え方や撮影・編集ノウハウを落とし込んでこの作品を制作しました。憧れの映像クリエイターの方にレビューしてもらえたことは、自分にとって大きな励みと財産になりました。
また、本作品はSONYが主催する動画コンテストにも応募しました。受賞こそなりませんでしたが、ありがたいことに最終ノミネートに残ることができました。さらに、地元・岐阜のアートフェスで映画館上映という経験も得ることができ、フリーランスとしての一歩を踏み出す自信につながった作品です。
この映像は自主制作作品であるため、直接的な報酬が発生する案件ではありませんでした。しかし、作品を通して得られた自信や新たなご縁もあり、本当に制作して良かったなと思います。
自主制作だからこそ「自分らしい表現」を突き詰めることができ、それを続けていくことで映像クリエイターとしての世界観やブランディングも確立していけると思います。できれば今後も1年に1本ぐらいは気合を入れた自主制作作品を出していければと思っています。
今後も言葉にならない感情や空気感をすくい取るような映像をていねいに、そして真摯に届けていきたいと思います。