こんにちは。岐阜で映像クリエイターとして活動している井村旭宏と申します。普段は映像の企画から撮影・編集まで手がける「ビデオグラファー」として映像制作を行なっています。
映像制作の見積もりを受け取ったとき、「この項目は何のための費用なんだろう」「なぜこの金額になっているんだろう」と、疑問に思われたことはありませんか。ありがたいことに、最近たくさんの見積もりのお問い合わせをいただくのですが、その都度、項目の背景や金額の考え方を一つひとつ口頭で補足するのはなかなか難しいと感じていました。
そこで今回は、私が普段どのような項目立てで見積もりを作成し、どのような考え方で金額を決めているのかを、できるだけ分かりやすくまとめてみたいと思います。これから映像制作を発注しようとお考えの企業ご担当者様に、見積書の見方や、私たちのような個人のビデオグラファーとの付き合い方の参考にしていただけたら嬉しいです。
案件の内容によって多少の増減はありますが、私が作成する見積もりのほとんどは、次の5つの項目を基本として構成しています。
プリプロダクション費
撮影費
編集費
カラーグレーディング費
制作管理費
もちろん、モデルさんの手配が必要であればモデル代、ナレーションが必要であればナレーション代、自前の機材で対応しきれない場合はレンタル機材費など、案件ごとに個別の項目が追加されることもあります。ですが、ほぼすべての見積もりのベースになっているのは、この5つの項目だと考えていただいて大丈夫です。それぞれ、どういうものなのかを順番にご説明します。
映像業界では「プロダクション」が撮影本番を意味するため、その前段階、つまり撮影前に発生する作業に対する費用を「プリプロダクション費」としてまとめています。
内訳としては、打ち合わせやロケハン(撮影場所の下見)にかかる費用、そして企画・構成から携わる場合は、企画構成費や香盤表(撮影当日の進行表)の作成費などが含まれます。
この項目は、私がどこまでの業務を任せていただくかによって、金額が大きく変わるのが特徴です。別のディレクターさんが既についていて、私側での企画・構成の作業がほとんど発生しない案件であれば、この費用自体を外すこともあります。逆に、打ち合わせやヒアリングにしっかり参加し、構成を考えて台本を作成し、遠方へのロケハンも行うような案件であれば、それなりのボリュームの費用感になることもあります。案件の規模によっては、ロケハン費や企画費として項目を細分化する場合もあります。
撮影費は、基本的に稼働時間を基準に考えています。時間単位の基本料金をベースに、案件の難易度や撮影内容に応じて金額を調整するイメージです。
これはあくまで私が一人(いわゆる「ワンオペ」)で対応する場合の費用感で、アシスタントが必要な案件や、複数人のカメラマンを私がアサインして対応する案件の場合は、その分の人件費が上乗せされる計算になります。
編集費を左右する一番のポイントは、「何分の動画を作るか」という尺です。そのほかに、撮影した素材をシンプルにつなぐだけで完成するのか、After Effectsなどを使ったテロップアニメーションやモーショングラフィックスを多く含むのか、そしてインタビューの有無によっても工数が変わってきます。特にインタビュー動画の場合は、収録した素材をしっかり精査してどの部分を使うか検討する作業が発生するため、その工数も編集費に反映しています。
短い動画であれば比較的コンパクトな費用で収まりますし、しっかり作り込む動画や、作業に長い期間を要するボリュームのものであれば、費用感も相応に上がっていきます。なお、本格的な3DCGや高度なモーショングラフィックスが必要な場合は、信頼できる専門パートナーと連携して対応しますので、その際は別立ての予算項目として計上させていただくこともあります。
④カラーグレーディング費
「編集費に含まれるのでは?」と思われるかもしれませんが、あえて項目を分けているのには理由があります。
そもそもカラーグレーディングとは、Log撮影(あえてコントラストや彩度を抑えて撮影し、センサーが取り込める情報量を最大限残しておく、後から色を作り込むことを前提とした撮影手法)を行った映像に対して、編集段階でじっくりと色を作り込んでいく作業のことです。
ただし、そもそもLog撮影やカラーグレーディングが必要かどうかは案件によって異なります。カラーグレーディングを行うことで、よりリッチな映像に仕上げたり、表現したい世界観を演出したりできますが、世界観の演出よりも「情報を正確に伝えること」や、イベントなどの「ライブ感・リアルな空気感を伝えること」の方が重要な案件であれば、むしろカラーグレーディングを行わない方が適していることもあります。その場合は、この項目を外します。反対に、ブランディング動画のようにブランドの魅力を最大限引き出す必要があると私が判断した案件では、編集費に含めてしまうこともあります。
あえて項目を独立させているのは、予算に応じて柔軟に選んでいただけるようにするためです。「予算を抑えたい」というご要望をいただいたときには、「Log撮影ではなくカメラ内の標準設定で撮影し、カラーグレーディングの工程を省くことで予算を抑えましょう」というように、具体的な選択肢としてご提案できます。
⑤制作管理費
自前の機材費をはじめ、契約している編集ソフト代、音源サービス代、オンラインストレージ代、お客様のデータを一定期間保管するためのハードディスク代など、案件の有無にかかわらず発生している間接的な経費を、案件ごとに按分して計上しているのがこの項目です。
メールのやり取りや請求書・会計処理といった、細かな事務管理のコストもここに含まれます。
交通費や宿泊費が発生する場合は、実費ベースで試算しています。車移動の場合は、拠点から一定の距離を超える移動を伴う打ち合わせや撮影について、実費(概算)を計算して見積もりに計上させていただいています。
このように、案件の内容やボリューム感、難易度を伺ったうえで、作業ごとの基準に基づいて見積金額を算出しているのが、私の見積もりの全体像です。
予算交渉をいただいたときに大切にしていること
ここからは、見積もりに対する私自身の信条・ポリシーについてお話しします。
例えば、「ご提示した予算を、もう少し抑えられませんか」という予算交渉をいただくことがあります。そうしたとき、私は作業内容や工数を変えずに、単純な値引きに応じることは基本的にありません。
映像制作は、材料を仕入れて加工し販売するようなビジネスではなく、私自身の作業・労働そのものに対して対価をいただくビジネスです。だからこそ、作業内容や工数を変えないまま安易に値引きをしてしまうと、「では最初の見積もりは何だったのか、吹っかけていたのか」という話になりかねず、お客様との信頼関係を築くうえで、かえってマイナスになってしまうと考えています。
そのため私は、初回のお見積もりでは案件の概要をしっかりお伺いし、それに基づいた費用感を見極めたうえで、自信を持ってご提示するようにしています。そのうえで予算のご相談をいただいた場合は、ご希望の予算に近づけるために「どこをどう削れば実現できるか」を一緒にご相談する、というスタンスを大切にしています。
具体的には、次のような調整のご提案をすることが多いです。
✔ カラーグレーディングを行わず、通常の撮影・編集にする
✔ 撮影日数を工夫し、複数日を1日に収める
✔ 動画の尺を短縮する
✔ 企画構成の一部(構成案の叩き台など)をお客様側にご準備いただき、プロの視点からアドバイスを加える形で撮影・編集を進める
作業に対するレートや費用感そのものを下げるのではなく、お客様の希望される予算の中で、最大限の成果を発揮できる方法を一緒に考えるというのが、私が予算のご相談に対応する際の基本スタンスです。
まとめ
今回は、私が普段お出ししている見積もりの考え方について整理してみました。<おさらい>として要点をまとめます。
✔ 見積もりは基本的に「プリプロダクション費」「撮影費」「編集費」「カラーグレーディング費」「制作管理費」の5項目で構成
✔ プリプロダクション費と撮影費は、任せていただく業務範囲や稼働時間によって変動する
✔ 編集費は尺・演出の複雑さ・インタビューの有無で変わる
✔ カラーグレーディング費をあえて独立させているのは、予算調整の選択肢を持てるようにするため
✔ 制作管理費は間接経費を按分した、全案件共通の基本項目
✔ 予算交渉があった場合、単純な値引きではなく「何を削れば実現できるか」を一緒に考える
見積もりの内訳や考え方について、気になる点やご不明な点がありましたら、お気軽にご質問ください。お見積もりは無料で対応しております。ご相談・ご依頼したい映像制作のプロジェクトがございましたら、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。