こんにちは。岐阜で映像クリエイターとして活動している井村旭宏と申します。普段は映像の企画から撮影・編集まで手がける「ビデオグラファー」として映像制作を行なっています。
基本は自らカメラを回して撮影・編集する案件がほとんどなのですが、そんな自身の仕事においても「動画生成AI」を活用する機会がここのところ一気に増えてきました。今回は、最近の仕事の中で動画生成AIを取り入れるようになった背景と、具体的な活用法についてお伝えします。
これまで映像制作の現場では、「撮れなかったカット」や「映像として残せていない場面」は、諦めるか、クライアントから提供されるスチール素材でやりくりするしかありませんでした。静止画を編集画面上で少しだけ動かす、いわゆる疑似パンや疑似ドリーのような手法で、「動いているように見せる」工夫をすることも少なくありません。
そんな中で動画生成AIの精度が急速に上がってきたことで、実際に撮影・記録された素材を土台にしながら、その表現の幅やクオリティをもう一段階底上げできる場面が増えてきました。
動画生成AIは、テキスト指示で映像をゼロから組み立てていイメージが強いと思いますが、自身の活用法では、実際に撮影した、あるいはお客様からお預かりした素材をベースに動画生成AIの技術を掛け合わせて表現の幅を広げるという使い方を主にしています。目指しているのは、見ている方に違和感を与えず、実写の質感を損なわないクオリティで、AIによる表現を映像の中に自然に馴染ませることです。
ちなみに、数あるサービスの中でも、使用用途やコストパフォーマンスの観点から、私は主にRunwayというツールを使っています。
私が実践している動画生成AIの使い方
では、実際の仕事の中で、動画生成AIをどう使っているか。私の場合、大きく次の3つの使い方が多いです。
①お客様から提供された写真を動画化する
自分自身がその場に居合わせていない現場やイベントなどについて、お客様から写真だけをお預かりし、それを動画の中に組み込みたいというオーダーをいただくことがあります。以前であれば、いただいた写真をそのまま挿し込むか、疑似的な動きをつけることしかできませんでした。
しかし今は、内容にもよりますが、提供された画像素材から動画を生成することで、他の実写カットに混ぜても違和感のない映像素材に仕上げられるようになりました。自分がカメラを持って撮影していない場面でも、お預かりした素材をもとに動画として補える、というのは大きな変化だと感じています。新たに撮影のための時間や人手を確保しなくても、手元にある写真を活かして映像として形にできるというのは、コストを抑えながら表現の幅を広げたいと考えていらっしゃる企業様にとっても、一つの選択肢になると思っています。
②編集の中で、表現の幅を広げる
編集をしている中で、「ここにタイムラプスの演出を加えたい」「実際には撮影していないカメラワークのカットを挟みたい」「日中に撮影した素材だけれど、夕方や夜のイメージに変えたい」などのアイデアが浮かぶことがあります。
こうした演出上のアイデアを、動画生成AIを使うことで、試しながら取り入れられるようになりました。撮影し直すのではなく、編集段階で表現の選択肢を広げる手段として活用しています。限られた予算の中で演出の幅を広げられるという点は、動画生成AIの大きなメリットだと感じています。
③映像に映り込んでしまった見せたくない部分を整える
撮影現場では、電線や貼り紙、通行人など、本当は映したくないものがどうしても画角に入ってしまうことがあります。以前であれば、割り切るか、トリミングで調整する程度しか手段がありませんでした。今は、消したい対象をテキストで指定することで、AIが検出し、周囲の背景に馴染む形で自然に消し込んでくれるような「バレ消し」的な処理も可能です。こうした実務上の細かな課題を解決できるのも、動画生成AIを活用するメリットだと思います。
動画生成AIを、より効果的に使うためのコツ
ここからは、実際に動画生成AIを使う中で、より狙い通りの映像に仕上げるためのちょっとしたコツをお伝えします。
動画生成AIそのものに、いきなり指示(プロンプト)を打ち込んで一発勝負をする、ということはあまりしていません。実現したいイメージや現場の状況を、GeminiやClaudeといった対話型のAIモデルに相談し、生成した映像を対話型AIに貼り直して、何度かやり取りを重ねながらプロンプトを練り上げていく、という進め方をしています。
対話を通じて意図を言語化し、精度の高い指示に落とし込んでから動画生成AIに渡すことで、狙った通りの仕上がりに近づけやすくなっていると感じています。動画生成AI単体で完結させるのではなく、複数のAIを組み合わせて使うのがコツです。
ここまで動画生成AIの活用について前向きな話をしてきましたが、正直にお伝えしておきたいこともあります。
一つ目は、動画生成AIは万能ではない、ということです。対話型AIと丁寧にプロンプトを練り上げても、完全にイメージ通りの仕上がりになるとは限りません。何度か生成を重ねながら、少しずつ理想の形に近づけていく、という前提で進めることが多いですが、素材や狙いのイメージによっては実現が難しいこともあります。
二つ目は、費用面についてです。動画生成AIの利用よって生じるコスト(クレジット消費など)は対話型AIや画像生成AIと比べても大きいです。そのため、編集の過程で「ここにAIの演出を加えてほしい」といったご要望を追加でいただいた場合、生成する点数や表現の内容によっては、追加費用としてご相談させていただくこともございます。
自らの手で撮影をするビデオグラファーの動画生成AIの活用法として、実際に撮影・提供された素材をベースに、①写真の動画化、②演出の拡張(タイムラプス・カメラワークの追加・時間帯変更など)、③バレ消し、などの活用法がある
対話型AIと一緒にプロンプトを練り上げてから動画生成AIに渡すようにする
動画生成AIは万能ではなく、素材によっては意図した表現の実現が難しいものや、別途費用が発生する場合もある
ゼロから架空の映像を組み立てていく使い方ではなく、実際に撮影した、あるいはお客様からお預かりした素材を活かしながら、その表現の幅を広げ、クオリティを底上げしていく使い方が、自らカメラを持って現場に立ち、素材を撮影するところから携わっているビデオグラファーの合理的な活用法だと感じています。
動画生成AIの活用も含め、映像制作についてのご相談や無料のお見積もりなどは、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
制作の裏側や日々の気づきは、Instagramでも発信しています。