現場で「選ばれるカメラマン」の
5つの条件
現場で「選ばれるカメラマン」の
5つの条件
こんにちは。岐阜で映像クリエイターとして活動している井村旭宏と申します。
普段は映像の企画から撮影・編集まで、ひとりで一貫して手がける「ビデオグラファー」として映像制作を行っています。
今回は、「現場でカメラマンが選ばれる」ということについて書いてみたいと思います。一緒に仕事をしていて「またこの人にお願いしたいな」と思うカメラマンさんに出会ったことはありませんか?逆に「腕はいいけど、なんかやりづらい・・・」という方に、心当たりがある方もいらっしゃるかもしれません。
私自身、2024年の春に独立してから2年半ほど、フリーランスの映像クリエイターとして活動してきました。その間、さまざまなカメラマンの方とご一緒し、多くのことを学ばせていただきました。また、独立以前は地元・岐阜の印刷会社のディレクターとして、その後は名古屋の食品メーカーで広報担当として、カメラマンに撮影を依頼する側の立場も経験しました。発注する側・される側の両方を経験してきたからこそ見えてきた、「求められる、喜ばれるカメラマン像」について、まとめてみたいと思います。
まず前提として、求められるクオリティの写真や映像を撮影できる技術力はあって然るべしということです。ただ、技術は高ければ高いほど選ばれる存在になれるのかというと、必ずしもそうとは限りません。これは、発注する側・される側の両方を経験してきた私が、実感として断言できることです。
技術力という土台の上に、+αで備わっている人が、企業やディレクターから「また頼みたい」と思ってもらえる存在となります。今回は、その「もう何か」を、5つの切り口で整理しました。
1つ目は、シンプルですが「人柄」です。身も蓋もない話ですが、個人的には結局、人間力が一番大事なのかなと思っています。
ピリピリした緊張感のある現場からは、いい画は生まれにくいですし、周りのスタッフも楽しく仕事ができません。カメラマンが率先して、現場に明るい空気をつくれるかどうかが、良い画が撮れるかどうかの分かれ目になると、私は感じています。
元気に爽やかに挨拶をすることはもちろん、あえて自分が恥をかくことも厭わずに冗談を言ったり、少しおどけてみせたりする。場を和ませるため、そして被写体の自然な表情を引き出すために撮影体験として相手を楽しませる姿勢が大切だと思います。
もう一つ、何気に大切だと思うのが「名前で呼びかけること」です。クライアントの担当者や被写体の方の名前を覚えて、名前で呼びかけながらコミュニケーションを取る——それだけで、現場の距離感はぐっと縮まります。正直、ここは私自身もできていない部分でもあるのですが、意識して取り組むようにしています。
2つ目は、「分かりやすく伝える能力」です。カメラマン自身がディレクターやクライアントの求める画、被写体の表情を引き出すために、「こうしてほしい」という要望を言葉で分かりやすく伝える力が欠かせません。
私は企業のプロモーション映像などで、モデルさんではなく、撮影先の企業の社員さんなど、いわゆる"素人"の方を撮影する機会が多くあります。そうした方たちが迷わないように、「これはどんなシーンの撮影なのか」「どんな仕草や表情をしてほしいのか」を身振り手振りも交えながら、分かりやすく説明する能力が求められます。
3つ目は、「傾聴と主張のバランス」です。制作物はクライアントのためにつくるものなので、基本的にはクライアントの意向が最優先です。また、現場にディレクターがいる場合は、演出の部分は基本的にディレクターの役割です。まずは彼らの意向にしっかり耳を傾けることから始まります。
ただ、「指示待ち」になってはいけません。カメラマンという立場だからこそ持てる視点もあるはずです。自分の意見も臆せず伝え、互いの考えをすり合わせながら、より良い撮影をつくり上げていく姿勢が求められます。
一つの目安として、私は「何を撮るか」はクライアントやディレクターの領分、「どう撮るか」——どんなアングルから撮るか、どんな焦点距離を使うか、被写体の方にどんな仕草や表情をしてもらうか——はカメラマンの領分だと考えています。前者はなるべく意向を尊重し、後者は積極的に提案していく。このバランス感覚を正しく持っているカメラマンこそ、現場で重宝される存在だと考えています。
4つ目は、「事前準備」です。撮影は、シャッターを切るまで——動画であればRECボタンを押すまでの過程こそが勝負だと、個人的には考えています。
例えば、撮影させていただくクライアントの情報をホームページなどで事前に確認しておく。事業内容や沿革、社長がどんなことを大切にしているかといったことに目を通しておく。機材のメンテナンスはもちろんのこと、必要な設定も現場に入る前に済ませておく。どんなショットを撮るのかをあらかじめリストにまとめておいたり、参考イメージを集めておく。こうした小さな積み重ねの有無が、当日のパフォーマンスに確実な差となって現れてくると実感しています。
最後は、「社会人としての礼儀作法」です。服装、髪型といった身だしなみの部分も、ここに含まれます。
カメラマンという職業は比較的自由な部分があり、多少個性的な髪型をしていても、髭を生やしていても、「カメラマンってそういうものだよね」と受け止めてもらえます。むしろ、ちょっと尖っているくらいの方がブランディングにつながることもあるでしょう。とはいえ、TPOは存在します。特に企業案件を手がけるカメラマンにとって、現場の雰囲気や企業風土に合わせた立ち振る舞いができることは、ディレクターや制作会社が安心してその人を起用できる材料になります。
カメラマンだから、クリエイターだからといって、自由な服装や髪型が常に許されるというわけではありません。個性として演出する部分と、TPOをわきまえた行動や立ち振る舞いをする部分——ここも、バランス感覚が問われます。
ここまで偉そうに述べてきましたが、正直に言うと、私自身もこれらを完璧にできているわけではありません。まだまだ修行の身です。日々意識しながらアップデートを重ねています。その意味で、今回は自戒の意味も込めた記事となりました。
ディレクターや広報を担当をしていた経験から確信して言えるのは、「腕が良ければ何でもいい」「腕がある人から選ばれていく」というわけでも必ずしもない、ということです。もちろん案件によって求められるクオリティは変わってきますが、発注する側の視点に立つと、技術的な基準に達している上で、より「仕事がしやすい」「一緒にいて楽しい」「クライアントに紹介しても安心できる」人に声がかかりやすいというのが、私の実感です。
今回挙げた5つの条件を、改めて振り返ります。
✔①元気さ——明るい空気をつくる
✔②言語化能力——言葉で分かりやすく伝える
✔③傾聴と主張のバランス感覚——「何を撮るか」は委ね、「どう撮るか」は提案する
✔④事前準備——シャッターを切る前の積み重ねが差になる
✔⑤社会人としての礼儀作法——TPOに合わせた立ち振る舞い
クリエイターとして技術を磨くことと同じくらい、職業人としてこれらを意識し続けること。それが、長く必要とされるカメラマン・映像クリエイターであるための土台になると、私は信じています。
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