ビデオグラファーのジンバル・手持ち・三脚の使い分け
ビデオグラファーのジンバル・手持ち・三脚の使い分け
こんにちは、岐阜を拠点に映像クリエイターとして活動している井村旭宏です。
私は普段、動画制作の企画から撮影・編集まで一人で対応する「ビデオグラファー」として活動しています。そのため、撮影においては、機動力とクオリティの両立に強いこだわりを持っており、多くの試行錯誤を重ねてきました。ワンオペ撮影では、限られた時間とリソースの中で効率的に撮影を進めることが求められ、撮影機材の使い分けがとても重要になります。
映像の代表的な撮影手法として「ジンバル撮影」「手持ち撮影」「三脚撮影」が挙げられると思いますが、皆さんはどのように使い分けられていますか?
今回は、ワンオペでの撮影をメインとする私が、どのように撮影手法を使い分けているのかについて紹介します。
まずは、それぞれの撮影手法の特徴をまとめます。もう知ってるよ!という方はこのパートは読み飛ばしていただいても大丈夫です。
ジンバルを使用すると、滑らかで流れるような映像を撮ることができます。移動しながらの撮影でも手ブレを抑えられ、映画のようなプロフェッショナルな仕上がりが可能です。特に、被写体を追いながらの撮影やスムーズな移動ショットを撮る際に効果を発揮します。
メリット
・手ブレを大幅に抑え、滑らかな映像が撮影できる
・ダイナミックな撮影や被写体の追尾が容易で、映像のクオリティが向上する
・機動力が高く、ワンオペでも効率的に動きのある映像を撮影できる
デメリット
・バッテリー管理や機材のセッティングが必要
・長時間使用すると腕に負担がかかる
・狭い空間や即興性の高い場面では使いづらい場合がある
カメラを直接手で持って撮影する方法です。臨場感やダイナミックな動きを演出しやすいのが特徴です。また、カメラを素早く構えられるため、即興性の高い撮影にも対応しやすいです。
メリット
・カメラ操作の自由度が高く、素早いカメラワークが可能
・意図を伴った手ブレは、臨場感や緊張感を演出できる
・機材セッティングに時間がかからない
デメリット
・手ブレが強く出ると視聴者が不快に感じることがある
・安定性に欠けるため、長時間の一定したショットには向かない
・撮影者の動きが直接映像に影響するため、スキルが求められる
三脚を使用すると、ブレのない安定した映像が得られます。インタビューや風景撮影など構図をしっかり決めたいシーンに最適で、静かで落ち着いた印象を与える映像を撮ることができます。
メリット
・画角を固定できるため、安定した映像が撮れる
・長時間の撮影やインタビューなどに最適
・視聴者に安心感を与え、プロフェッショナルな仕上がりになる
デメリット
・設置や移動に手間がかかり、機動力が低下する
・動きのある映像表現には不向き
・撮影の自由度が制限されるため、ダイナミックなカットには不向き
では、本題・・・。私の撮影機材の使い分けや使用頻度は次のような感じです。
私の撮影の約7割はジンバルで行っています。主に20-70mm F4のズームレンズと組み合わせ、ズーム筒の長さは35mmを基準にバランスを取っています。現場に入る前にセッティングを済ませておくことで、スムーズに撮影を開始できるようにしています。
カメラ内の手ぶれ補正モードは「スタンダード」を使用し、過度な補正がかからないよう調整。ジンバルを使用することで、80点以上の安定した素材を量産できるため、メインの撮影手法としています。
ちなみにジンバルはDJI RS4を使用しています。ジンバルと手持ちを素早く切り替える機構がついているため、ジンバルと手持ちを割と頻繁に切り替えたい私の撮影スタイルに大変合っていて、重宝しています。
手持ち撮影は全体の2〜3割程度を目安に行っています。単焦点レンズや望遠ズームレーズに切り替えて背景ボケをしっかり活かしたショットを撮りたいときや、接写など小さなカメラワークが必要な時、マニュアルでのフォーカス送りを行いたい場面などで主に使用します。
現場の状況に応じて、時間や場所に余裕がある場合で手持ちに切り替えて撮影することが多いです。カメラの手ぶれ補正モードは「アクティブ」に設定し、脇を締めなるべく不自然な手ブレを抑えるよう意識しています。ちなみに私はショルダー型のカメラバッグを前がけして、シネサドル的にバッグの上にカメラを置いて撮影するという方法を好んでよく行います(この使い方のキッカケになった動画はこちら)。
手持ち撮影は、意図しない手ブレなど失敗することも少なくありませんが、上手くハマった時は自分の想像を超えた120点のキラーショットが出てくることもあります。動画の質や情緒感を向上させるために、タイミングを見計らって手持ち撮影にトライすることを毎回の現場で意識しています。
私は基本的に三脚はあまり使用しません。割合としては全体の0.5割程度です。三脚を使うとどうしても機動力が落ちてしまうため、数秒程度の固定ショットであればジンバルや手持ちで対応することが多いです。編集ソフトのスタビライズ補正の「ロック」と組み合わせると、案外ガチっと止まってくれます。
三脚を使用するのは、主に長時間のインタビュー撮影やタイムラプス撮影など、長時間、画角を固定し続ける必要がある場面です。ジンバルや手持ちでは撮影が困難だなと感じた場面に置いてのみ、三脚は使用するようにしています。なお、三脚撮影の際はカメラの手ぶれ補正はオフにして、意図しない画角の動きを防ぐように設定しましょう。
ジンバルや手持ちの時は与えられた時間でいかに数多く撮るかを意識していますが、三脚を使うと判断した時点で撮影効率はあまり気にせず、100点の絵をきっちりと撮りきるために構図や露出などにしっかりと気を配ることを意識しています。
ワンオペ撮影では、機材の使い分けが映像のクオリティに直結します。
ジンバル撮影(使用頻度70%)
撮影のメイン機材。スムーズでプロフェッショナルな素材を安定的に量産できる。
手持ち撮影(使用頻度25%)
背景ボケや繊細なカメラワークなど、キラーショットを狙う場面で使用。
三脚撮影(使用頻度5%)
長時間の固定撮影など安定した動画が求められる場合に限定的に使用。
どの撮影手法をどの場面や頻度で使用するかは、個々の作風や撮影スタイル、機材構成によって変わってくるので正解はありません。大切なことは、目まぐるしく状況が変化する撮影現場において、素早く適切な撮影手法を選択できるようご自身の中での判断基準を明確化しておくことだと思います。
それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることで、ワンオペでも効率的かつ高品質な映像制作が可能になります。もしこの記事が皆さんの映像制作のヒントになれば幸いです。