ワンオペ映像クリエイターがたどり着いた効率的な映像編集ワークフロー
ワンオペ映像クリエイターがたどり着いた効率的な映像編集ワークフロー
こんにちは。岐阜で映像制作を行なっている井村 旭宏と申します。
普段は映像の企画から撮影・編集・納品までを一手に手がける「ビデオグラファー」として、企業や個人のブランディングやプロモーションを映像の力でサポートしています。
本記事は、主に個人事業主など小規模体制での映像制作を行なっている、あるいは副業や趣味など個人で映像編集を行なっている方に向けて書いています。特に、「1本動画を作るのにすごく時間がかかってしまう」「映像作品の制作スピードとクオリティをもっと上げたい」という方にとって有益な内容となっているのではないかと思います。
僕は普段、いわゆる「ワンオペ」で仕事を進めることがほとんどです。企画から撮影、編集、納品までを1人で行うスタイルは自由度が高い反面、効率化を意識しないと時間がどんどん奪われてしまいます。その中でも特に編集作業は、行き当たりばったりで進めてしまうと、いたずらに時間だけがかかってしまいます・・・。
僕がたどり着いた方法は「編集ワークフローを固定化すること」です。どのような仕事であっても、基本的には下記のワークフローに沿って作業を行います。
1.素材の整理(フォルダ分け)
2.素材のチェック・選定
3.カットを並べる(ラフ編集)
4.テロップやエフェクトを加える
5.整音・サウンドデザイン
6.色編集(カラーグレーディング)
ポイントは全体の大枠を作ってから、細部を詰めていくという考え方です。例えるなら「塗り絵」のようなもので、最初に全体をざっと塗ってから、細かな部分を少しずつ丁寧に仕上げていくイメージです。
僕が普段使っている編集ソフトはDaVinci Resolveですが、どの編集ソフトでも応用できる普遍的な考え方ですので、ぜひ最後までお読みください!
撮影で収集した映像素材は、まずはしっかりと整理します。素材となるファイルを適切なフォルダに分けることで、後の編集作業が驚くほどスムーズになります。「映像素材」「オーディオ素材」「グラフィック素材」のように種類ごとに分けるのがおすすめで、僕は下記のような項目でフォルダを作成しています。この項目の空フォルダを作ってあり、案件のたびに毎回複製して使用します。
素材をしっかり整理しておけば、編集中に「どこに何があるのか分からない」といった問題を避けることができます。また、編集ソフト上でもPCと同一のフォルダ構造で素材を整理しておくことで、リンク切れが起きた際も素材探しが容易です。地味ですが、この「最初のひと手間」が作業全体をスムーズかつミスなく進める鍵となります。
素材が整理できたら、次は撮影素材をチェックしながら使用カットを選びます。効率的に作業を進めるためには、目的に応じて素材を分類しておくことがポイントです。
・シーンやロケーション別
・登場人物別
・映像の雰囲気別
などカテゴリーごとにタイムラインを作り、各素材の使えそうなシーンをひとつずつイン・アウト点を指定しながら適切なタイムラインに置いていきます。
また、素材選定をしながら重要度に応じてラベルやタグを付けたり、思いついた編集方法などは該当するクリップにメモを書き込んだりしていきます(例えば、マスクトランジションを適用するなど)。素材を視覚的に見やすい状態に整理しておくことは、後々の効率化に大きく寄与します。
次のステップは、映像全体の流れを構築する「ラフ編集」です。この段階では、まだ細部の編集には手を付けず、全体のストーリーや構成を形にすることを目指します。
ラフ編集を進める際は、選んだBGMに沿ってカットをざっくりと並べ、映像の全体像を組み立てます。多くの編集ソフトでは、タイムラインを上下に並べる機能がありますので、上記で作成したサブタイムラインを上に、本編タイムラインを下に配置し、必要なカットを上から下へ移動させる形で作業を進めると効率的です。
まずは全体をざっくりと置いてから、シーンの尺調整や入れ替えなどを適宜行い、よりストーリ性や没入感のある構成を目指します。
ラフ編集で映像の全体像ができていることで、テロップやエフェクトを加える作業において過剰な演出に走るのを防ぐことができます。編集の序盤でエフェクトや装飾に手を出してしまうと、ついつい凝りすぎてしまいます。しかし、大枠を先に完成させてから細かい演出を行うことで、映像全体のバランスに配慮しながら、シンプルかつ効果的な演出が考えやすくなります。
この段階では、BGMや効果音、ナレーションなどのバランス調整やノイズリダクションなどを行い、視聴者にとって心地よい音環境を目指します。
サウンドデザインもこの段階で行います。たとえば、映像の動きや雰囲気に合わせて効果音を配置したり、ドアの開閉音や足音、風の音などを加えることで映像がよりリアルに感じられるようになります。
映像だけでなく音にも注意を払うことで、視聴者の没入感が大きく向上します。
最後に行うのが色編集です。パソコンへの負荷が大きいカラー処理を後回しにすることで、それまでの作業を軽快に保つ工夫をしています。
色編集では、まず映像全体のトーンを調整し、全体的な統一感を持たせます。僕がよく使う方法として、最初にDaVinci Resolveのグループ機能を活用して、同じシーンや環境に属するクリップをまとめ、グループ全体にトーンを決めるカラーを適用します。その後、各クリップごとに露出やコントラストを微調整し、細部を詰めていきます。
なお、カラーグレーディングの詳細な手法については、また別の機会に詳しく記事にできればと思っています。この工程は映像の印象を大きく左右する重要な要素なので、時間をかけてていねいに取り組むことをおすすめします。
ここまできたら、あとはミスなどがないか全体の確認を行い、問題なければ適切な画質設定で動画を書き出してクライアントに提出します。
僕はこの6つのステップを確立したことで、作業効率や作業精度の向上、そして余計なストレスの軽減といったメリットを享受できました。ただし、映像制作の正解は無数にあり、今回の方法はあくまでその一例です。ぜひ自分に合ったスタイルを見つけ、効率化とクオリティアップを目指してみてください。
今回の記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。映像制作に関するご相談は、いつでもお気軽にお問い合わせください!